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アダムの原罪

第78回カンヌ国際映画祭「批評家週間」オープニング作品
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守るべきは社会のルールか
守るべきは社会のルールか
小児病棟に勤務する看護師の葛藤と決断を、極限の没入映像で映す圧巻の80分
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6.5(Fri) 新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
劇場情報
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TRAILER

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INTRODUCTION

守るべきは社会のルールか、それとも尊い命なのか?  医療現場の”今この瞬間”を浮き彫りにした、緊迫のヒューマンサスペンス

長編デビュー作『Playground/校庭』(21)で、カンヌ映画祭批評家連盟賞受賞、米アカデミー賞国際長編映画賞ショートリスト選出など、鮮烈なデビューを飾ったベルギーの秀鋭ローラ・ワンデル。長編2作目となる本作では、巨匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟がプロデューサーを務め、第78回カンヌ国際映画祭「批評家週間」のオープニングを飾り、大きな反響を呼び起こした。看護師ルシーを演じるのは、『CLOSE/クロース』『あやまち』などのフランスの実力派レア・ドリュッケール。『あのこと』『ミッキー17』といった話題作が続くアナマリア・ヴァルトロメイが、孤立したシングルマザー、レベッカの苦境を全身で体現。2人の迫真の演技からも目が離せない。とある病院の一夜を、驚異の接写とリアルタイムによる没入型カメラワークで描出。まるでドキュメンタリーのような臨場感あふれる映像体験で観る者の心を掴んで離さない圧巻のヒューマン・サスペンスが誕生した。

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STORY

ママといたい、でもしにたくない

ある病院の小児科センターに、左腕を骨折したアダムという4歳の男の子が入院した。栄養失調で痩せこけたアダムは発育が遅れ、骨が脆くなっている。裁判所は移民のシングルマザー、レベッカに問題があるとし、彼女の面会を制限する命令を下した。自らもシングルマザーである看護師長のルシーは、息子と引き離され、親権を失うことを恐れるレベッカに寄り添おうとする。しかしレベッカの思いもよらない行動と病院システムの歪みによって、ルシーは次第に追いつめられていく……。

Director

ローラ・ワンデル監督

監督の言葉】

私がこの映画で描きたかったのは、人が痛みや罪の意識をどう受け止め、
どう他者と向き合っていくかということです。

私たちは皆、誰かを傷つけたり、誰かに傷つけられたりしながら生きています。
それでも、人間である限り、理解し合うこと・赦すことをあきらめてはいけない。
それが“For Adam’s sake”——“人間であるがゆえに”の意味です。

私は『Playground/校庭』で“外の世界の暴力”を描きましたが、
『アダムの原罪』では “内なる暴力”、つまり自分自身との闘いを描いています。
人が自分の罪や喪失と向き合うとき、その静かな闇の中にこそ、希望の芽があると思うのです。

登場人物たちは言葉を失い、沈黙の中でしか互いを感じ取れない。
その沈黙の瞬間にこそ、人間の最も深い部分が表れる。
だから私はカメラを極限まで寄せて、呼吸や瞬きの間にある“赦しの気配”を撮ろうとしました。

“アダム”とは特定の人物ではなく、“私たちすべて”を指しています。
人間が人間であること——過ち、喪失、そして希望——。
それらすべてを抱えてなお、生きることを選ぶ。
それがこの映画の核心です。

ーローラ・ワンデル

監督プロフィール

1984年、ベルギー生まれ。16歳で『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』(75)に衝撃を受け、ベルギーの視聴覚芸術院(IAD)で映画製作を学ぶ。卒業制作の短編『Murs(原題)』(07)が世界各地の映画祭に出品。3本目となる短編『Les corps étrangers(原題)』(14)がカンヌ国際映画祭の短編コンペティション部門に選ばれ、その際にリュック・ダルデンヌとの交流が始まる。⻑編映画デビュー作『Playground/校庭』が第74回カンヌ国際映画祭ある視点部門に出品され、国際批評家連盟賞を受賞。BFIロンドン映画祭サザーランド賞、マグリット賞など、世界中の映画祭を席巻し、第94回アカデミー賞国際⻑編映画賞ショートリストにも選出された。ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌを製作に迎えた本作は、第78回カンヌ国際映画祭批評家週間のオープニング作品に選ばれ、ベルギー版アカデミー賞と称されるルネ賞(マグリット賞から2026年より改称)では最優秀作品賞、最優秀監督賞、脚本賞を含む、6部門ノミネートを果たした。広範な調査とフィールドワークに基づいて映画を構築することを特徴とする。

ローラ・ワンデル監督

Review

“圧倒的であり衝撃的で息苦しいほどの傑作”
“病院の困難な日常を描きながらも人間性を決して忘れない。社会派映画の新たなる傑作”

-Le Journal du Dimanche★★★★★

“キャスト陣の圧倒的演技が冴え渡る、見事だ”

-Le Parisien★★★★★

“力強く、誇り高い作品”

-Marie Claire★★★★★

“ただただ、素晴らしい”

-Positif★★★★★

“美しく、繊細で、慈愛に満ち溢れている”

-20 Minutes★★★★

“美しく、繊細で、慈愛に満ち溢れている”

-20 Minutes★★★★

“ローラ・ワンデル待望の新作は、予想を遥かに超えた。胸を打ち、息を呑むほど衝撃的だ”

-Bande à part

“ドリュッケールの演技は尊厳があり、さらに胸が張り裂けるほどの叫びを体現した”

-CinemaTeaser

“崩壊しつつある病院システムの核心を、強烈で胸を打つ没入感あふれるリアルタイム映像で描き出した”

-Ecran Large

“緊迫感がひしひしと伝わってくる。キャスト陣の演技は圧巻だ”

-Elle

“実にパワフルな<ホスピタル・サスペンス>”

-L'Humanité

Comment

人の後ろ姿を、どこへ向かうのか、何をしようとしているのか、
固唾を呑みながら追い続ける79分。
誰もがそれぞれの事情を抱えながら、ただ「今」を必死に生きている。
無情な不条理に、思わず叫びたくなる。
前作『Playground/校庭』に続き、ローラ・ワンデル監督の、
極限まで研ぎ澄まされたリアリズムに、圧倒された。

呉美保(映画監督)

これが監督第二作となるローラ・ワンデルの手法は今回も健在だ。
まさしく映画の極北。あるいはドラマの最終形。
看護をめぐる倫理的コンフリクト。制度と命のジレンマ。
二本の軸が軋みながら向かうラストの解釈も問題提起だ。

森達也(映画監督/作家)

デビュー作『Playground/校庭』から、その卓越した描写力、演出力、世界観において、すでに名匠の風格を感じさせたワンデル監督だが、2作目となる本作で、1作目の成功が偶然ではなかったことが証明された。
凄い作家が現れたものだ。

想田和弘(映画作家)

カオスのような夜の小児病棟を駆け回る看護師長。
その背中を追う手持ちカメラは、もがく社会を映し出す。
観る者に媚びず、しかし飽きさせない、完成度高い稀有なサスペンス。

池田香代子(ドイツ文学翻訳家)

母子を守るための制度が母と子を引き離し、
わが子を守ろうと母があがけばあがくほど、母も子も追い詰められるという逆説。
ふたりを救いたいとひとり奮闘する看護師の強いまなざしが問いかける。
病院がその名にふさわしいホスピタリティーを失い、
孤立した者が素直に心を開くことができないのは、
私たち自身の罪ではないのかと。

小野正嗣(作家、フランス文学者)

これはサスペンスなどではなく、紛れもない現状だ。それが何よりも恐ろしい。

尾崎世界観(ミュージシャン・作家)

いくら救いの手を差し伸べようとも、自らこぼれてしまう命がある。
それでも希望を見いだそうと働きかける看護師の視点から捉えた母子の姿は、もどかしく強い愛に縛られていた。
これは、人間心理の難解さが痛烈なまでに突き刺さる問題作だ。

伊藤さとり(映画評論家)

休む間もない緊迫の80分。
愛ゆえに起こる過ちや衝突を、追体験するようだった。
レベッカの速い足取りと、お守りのように髪を束ねるバレッタが、目に焼きついている。

小川紗良(文筆家・映像作家・俳優)

救うことも、救われることも、一筋縄ではいかない。
一瞬たりとも立ち止まらない葛藤を見つめながら、
動きが止まった瞬間、音が消えた瞬間、新たな世界が始まったように感じた。

瀬々敬久(映画監督)

我々小児医療従事者は病気だけを診ているのではない。
人を、家族を、生活ごと丸ごと診ている。

この映画はそれをリアルに、そしてシャープに描いている。

今西洋介(小児科・新生児科医)

次から次へと発生する緊急事態を捌いてゆく看護師長の姿はどんなヒーロー映画よりもヒ―ロー的でかっこいい。
本当は誰かをヒーローにしたりしないで済みたいのだけれど。

野中モモ(ライター・翻訳者)

子どもを危険な状況に追いやる、無知で未熟な母親を、だからといって孤立させてはいけない。その犠牲となるのは、結局は子どもなのだから。
ある小児病棟で親と子に手を差し伸べる、献身的な看護師の姿を通じて、この映画は問いかける。
子どものために、親は、大人はいったいなにをするべきなのか。

門間雄介(ライター/編集者)
(敬称略・順不同)

Cast

レア・ドリュッケール(ルシー役)
レア・ドリュッケール(ルシー役)

1972年、フランス生まれ。医師の祖父、小児科医の父のもと、医師家系で育つ。国立舞台芸術学校で演技を学び、演劇でキャリアをスタートさせる。心理サスペンス『ジュリアン』(17)で夫の暴力に苦しむ母親を演じ、セザール賞主演女優賞を受賞。マチュー・アマルリック、セドリック・クラピッシュ、コリーヌ・セロー、ナダヴ・ラピド、ジェローム・ボネル、カンタン・デュピュー、カトリーヌ・ブレイヤなど、フランスの個性的な映画監督の作品に出演。 カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作『CLOSE/クロース』(22)から、不条理コメディ『地下室のヘンな穴』(22)、アニメーション映画『マーズ・エクスプレス』(23)とコメディから社会派作品まで幅広く演じる。10代の継子との複雑な関係に巻き込まれる弁護士を大胆に演じた『あやまち』(23)、黄色いベスト運動における警察の不正行為を捜査する内部調査官を演じた『Dossier 137(原題)』(25)でセザール賞主演女優賞に再びノミネートをし、円熟味を増した緻密な演技で今やフランス映画界を代表する俳優のひとり。ワンデルはブリュッセル短編映画祭の選考委員を務めた際に、『ジュリアン』の基となった短編『すべてを失う前に』(12)でドリュッケールの演技に衝撃を受け、本作のルシー役に当て書きした。フランスの映画監督ジュリアン・ランバルディとの間に娘を持つ一児の母でもある。

アナマリア・ヴァルトロメイ(レベッカ役)
アナマリア・ヴァルトロメイ(レベッカ役)

1999年、ルーマニア生まれ。6歳でフランスに移住。幼い頃から演技を始め、10歳で500人の候補者の中から『ヴィオレッタ』(11)の主演に抜擢される。幼くしてヌード写真のモデルとされた実在の少女に扮したデビュー作でリュミエール賞有望女優賞を獲得。ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作『あのこと』(21)では中絶が違法だった60年代に望まない妊娠した大学生を演じ、セザール賞有望若手女優賞とリュミエール賞女優賞を受賞し、世界的に注目を集める。以降、『トラフィック』(24)で東京国際映画祭女優賞を受賞したほか、マリア・シュナイダーが被った性被害の実話を基にした『タンゴの後で』(24)や世界興収1億ドルを超えた大ヒット作『モンテ・クリスト伯』(24)と話題作に相次いで出演し、SFアドベンチャー大作『ミッキー17』(25)でハリウッド進出も果たした。女性の権利をめぐる作品に意欲的で、国際的にも活躍が広がる最注目の若手俳優。ワンデルは『あのこと』でヴァルトロメイを発見し、本作のレベッカ役の候補のひとりに想定した。

ジュール・デルサール(アダム役)
ジュール・デルサール(アダム役)

2018年、フランス生まれ。本作で俳優デビューを飾る。撮影当時5歳で初めての演技ながら、ルネ賞で新人男優賞にノミネートを果たした。本作では、当初から児童労働に関する法的な問題から双子をキャスティングすることを制約条件としていたため、双子の弟レオも代役として採用。午前にレオと準備を行い、午後はジュールと撮影を行った。現在、7歳。

Staff

製作:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟

兄ジャン=ピエールは1951年、弟リュックは1954年ベルギー生まれ。1970年代半ばから工場の閉鎖や労働者の抵抗をテーマにした多数のドキュメンタリーを手がけた後、長編第3作『イゴールの約束』(96)でカンヌ国際映画祭国際芸術映画評論連盟賞を受賞し、国際的な注目を集める。続く第4作『ロゼッタ』(99)、第6作『ある子供』(05)でカンヌ国際映画祭パルムドールに2度輝く。第8作『少年と自転車』(12)まで、史上初となるカンヌ国際映画祭で5作連続主要賞受賞の快挙を成し遂げた。10作品連続でのカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品となった最新作『そして彼女たちは』(25)で2度目となる同映画祭脚本賞とエキュメニカル審査員賞のW受賞を果たし、第98回アカデミー賞国際長編映画賞ベルギー代表にも選出された。周縁化された労働者階級の社会的現実を写実的に描く社会派リアリズムの巨匠として、今日までベルギー映画界の礎を築く。また、1994年に設立した自身の製作会社レ・フィルム・デュ・フルーブを通じて、本作をはじめ、『わたしは、ダニエル・ブレイク』(16)『母の聖戦』(21)『サターン・ボウリング』(22)『ジュリーは沈黙したままで』(24)『エミリア・ペレス』(24)など、国際的な共同製作も精力的に行っている。

撮影:フレデリック・ノワロム

1981年、ベルギー生まれ。 ドキュメンタリー映画のカメラオペレーターからキャリアを開始。以後、ベルギーのアートハウス映画を中心に多数の作品で撮影を手がけ、キャラクター主導の物語を生々しいリアリズムで捉えることで高い評価を受ける。『Les corps étrangers(原題)』からワンデル作品の撮影を担い、『Playground/校庭』でダブリン国際映画祭撮影賞を受賞。前作に続き、本作で再びルネ賞撮影賞にノミネートされた。

編集:ニコラ・ランプル

スイス生まれ。幼少期はプロサッカー選手を目指していたが、ベルギーに移住し、編集助手からキャリアをスタート。ワンデルとはベルギーの視聴覚芸術院(IAD)で知り合い、『Les corps étrangers(原題)』から編集を手がける。『Playground/校庭』と『そんなの気にしない』(21)でマグリット賞編集賞を受賞。『青いカフタンの仕立て屋』(23)でタンジール映画祭の最優秀編集賞を受賞。本作でルネ賞編集賞ノミネート。